いいそびれていただけのことばで

 

「詩的状態ないし詩的感動は(……)一世界、すなわち関係の完全な体系を、知覚しようとする傾向のうちに成立する」ポール・ヴァレリー

 

「ある本を読んでいるとき、興味がもてないからではなく、むしろ逆に、おもいつきや刺激や連想の波が押し寄せてきて、読書の途中で絶えず立ち止まる、というようなことが、かつてなかったであろうか?」ロラン・バルト

 

いつだってここにあったしここにあるたったひとつを離せずにいる

かたちとか色とかわからなくなってしまうまでにはもう少しある

見えていて当然だとは思わないでも見たくない見てしまうんだ

平気です平気だってばちりぢりになるより早く拾っとくから

かけがえのないものはないかけがえをあるものとしてそっと飲みこむ

知りたいと思った夜があったから知らずにいればと思えたりする

変わらずに異なることを繰り返す 難しいから時間がかかる

見たようで見られたようないくつかを薄らいでゆく九月のみどり

不意打ちのつもりじゃなくてただずっといいそびれていただけのことばで